いちいち「すりへらない」心が手に入る本
著者: 山根 洋士
「心をすりへらさない」とっておきの方法
本書は、単なる「自己肯定感を上げよう」と言って終わるのではなく、「なぜ自分はすぐに傷つくのか」「なぜ人の言葉に振り回されてしまうのか」を、心のクセとして捉え直すことで、少しずつラクになっていく方法を提案します。
「自分がダメだからだ」と責めるのではなく、心の反応の仕組みを理解することで、少しだけ距離を置いて見られるようになること。人は誰でも無意識に メンタルノイズ を持っているのだと知ると、いままでの自責感が少し軽くなります。
メンタルノイズ:無意識に心の中に染みついた思い込みやクセで、日ごろの不安や人間関係の苦しさを生んでいるもの
はじめに
つらい感情を「自分の弱さ」として処理しようとせず、まずは「心のクセ」として観察しましょう。
たとえば、「自分には価値がない」「人に近づくと傷つく」「信用すると痛い目を見る」などの思い込みは、本人の性格や能力の問題ではなく、潜在意識の中にある反応パターンとして捉えられます。そうすると、苦しさの原因が自分の「本質」ではなく、心のクセであるとわかるため、少し楽になるのです。
また、ただ「考え方を変えよう」と言われるよりも、実際に使える考え方が豊富に紹介されるのがいいです。たとえば、相手の言葉に反応したときに「今、自分の中のタネが反応したな」と認識するだけで、相手の一言を自分の価値そのものと結びつけにくくなります。
「無理に変えなくていい」「反応してしまう自分を責めなくていい」のです。
「どうせ自分なんて」という思い込み
本書の大きなテーマは、「人間関係で苦しむのは、あなたが劣っているからではなく、心のクセが反応しているからだ」ということです。
たとえば、仕事や人間関係で自分が評価されていないのではないかと気にしすぎる人は、ふつう「自分は価値がない」と感じてしまっていることが多いです。そういう感覚は、現実の具体的な失敗ではなく、過去の経験や思い込みが積み重なってできた「クセ」から生まれているのだと説明されます。
ここで大切なのは、こうした思考を「自分の価値の問題」として処理しようとしないことです。メンタルノイズに気づくことができれば、ネガティブな思考が邪魔をしにくくなります。
人間関係は「同じ価値観を求める」から疲れる
本書は、人間関係のストレスの多くが、相手と自分を同じ土俵で見ようとしてしまうことに起因していると指摘します。
たとえば、相手の価値観や考え方が自分と違っていても、「なぜわかってくれないんだ」と思ってしまうと、対立が生まれやすくなります。そこで著者が提案するのが、「部活の違い」という比喩です。
水球部の人とサッカー部の人は、同じスポーツが好きでも、価値観が違うのは当然です。相手が別の部活に所属しているなら、同じように考えることを求めるのは無理があります。人間関係も同じで、価値観の違いは「問題」ではなく、「前提の違い」だと受け止めると、ストレスがかなり減るのです。
「嫌い」を否定しすぎない
本書では、人を嫌うこと自体を否定しない姿勢も大事だと伝えています。
人付き合いが苦手な人ほど、「人を嫌ってはいけない」「無理に良好な関係を作らなければならない」と自分を縛ってしまいがちです。しかし、好き嫌いは自然な感情です。むしろ、無理に相手に好意を持とうとする方が疲れるのです。
ここで紹介されるのは、漫才コンビのように「お互いを嫌いだと認め合っている」関係の考え方です。嫌いな気持ちを否定せず、でもそれに振り回されず、共通の目的に集中する。そういう関係性のほうが、むしろ健全なのではないかと考えさせられます。
反応するタネ
私たちは、相手の一言に反応するのは、自分の中にその言葉を受け止める土台があるからです。たとえば、「仕事ができない」と言われて深く傷つくのは、その言葉が自分の中の「価値の条件付き自己肯定感」に触れるからです。
私たちは「仕事ができる人だけが価値がある」と思い込んでいるため、たった一言で自分を否定されたように感じてしまうのです。それは、ただの 反応するタネ だと気づけば、その言葉を「自分の価値そのもの」と結びつけにくくなります。
最後に
この本は、自己肯定感を「高める」ためのハック本ではありません。むしろ、心の反応のパターンを知り、相手や自分の言葉に振り回されにくくなるための「設計図」だと感じました。
ネガティブな感情を責めるのではなく、ただ「今、メンタルノイズが起きているな」と認識するだけで、心が少し楽になります。
- 人の言葉を気にしすぎて、すぐ落ち込む
- 人間関係に疲れやすく、疲れがなかなか取れない
- 「自分は価値がないのでは」と思い込みやすい
- なるべく人に嫌われたくないと無理してしまう
- いまの自分の心のクセを、少しだけ客観的に見てみたい
人間関係に疲れている人、いちいち気にしすぎてしまう人、自分を責めやすい人に、おすすめできる一冊です。
